誕生日だった/今世の目標

先日誕生日を迎えた。家族や友人や職場の人が祝ってくれて嬉しかった。 10代の頃、17歳で交通事故で死ぬのが一番美しい気がして17歳で死にたいと思っていた。16歳から17歳になる夜、部屋で椎名林檎の『17』を聴いた。駅から高校までの徒歩5分に満たない道の…

『いい子のあくび』を読んだ

初めて読んだ高瀬隼子さんの小説は『水たまりで息をする』だった。衝撃だった。小川を流れる澄んだ水のように静かで心地よい手触りの文章なのに、終始漂う不穏な雰囲気。終盤の展開、圧倒的なカタルシス。なんとも名状し難い読後感で強く印象に残る作家さん…

『パイナップルの彼方』を読んだ

会社を休職してから1年が経った。 1年休んで、体調は随分良くなったものの、私は未だに復職できないでいる。 1年前の3月1日、初めて心療内科にかかった日のことはよく覚えている。 2月の末に会社で過呼吸を起こして早退し、そこから会社に行けなくなった。思…

葬列

祖母の訃報が届いたのは8月10日の11時頃だった。 その日は山の日で、月曜日だけど仕事が休みだったため、家でごろごろしていた。 祖母の容態が悪いことは母から聞いていた。大柄で、甘いものが好きだった祖母は体格が良かったが、お見舞いに行く度に体が一回…

『少女邂逅』を観た

外はすっかり春の陽気で、数週間ぶりの洗濯日和の土曜日だった。 カモミールクッキーが焼けるまでの12分を待つために、何となく選んだ『少女邂逅』。面白かったし、映像も綺麗で、よかったのだけれど、あまりにも救いがなくてしんどくなってしまった。 主人…

『蜜蜂と遠雷』を観た

映画『蜜蜂と遠雷』を観た。恩田陸原作の小説が松岡茉優さん主演で映画化されたもの。 一言で感想を言うならば「解釈違い」だった。 私にとっての『蜜蜂と遠雷』は、かつて天才ピアノ少女だった栄伝亜夜が母の死を契機にピアノから遠ざかるものの、周囲の人…

『小川洋子の偏愛短篇箱』を読んだ

運転免許の更新に行こうと思っていた。3年前のちょうど今日、指導教官が「誕生日おめでとう」と言いながら運転免許を渡してくれて、誕生日に免許を更新するのもいいなと思った。 昨日届いたばかりの新しいアイシャドウを下ろし、お気に入りのチークとグロス…

『アルジャーノンに花束を』を読んだ

最近は中高生の頃に読んだ本を読み直すことが多い。新しい作者を開拓するエネルギーがなく、小説によって引き起こされる自分の感情の揺れ(しかもどういった揺れかというのは小説を読むまで分からない)に向き合うエネルギーがない。要するに疲れている。 馴れ…

『肩ごしの恋人』を読んだ

唯川恵『肩ごしの恋人』を読んだ。 この本を手にとったのは、タイトルが気になったとか、唯川恵が好きだとかではなく、ナツイチを買うともらえる猫のしおりが欲しかったからだ。集英社文庫がやっているナツイチ、名の売れた作者名が並び、読んだことあるタイ…

『蛇行する川のほとり』を読んだ

恩田陸『蛇行する川のほとり』を読んだ。 私にも確かに少女だった頃が存在するはずなのに、少女だった私が何を考えていたのかほとんど思い出せない。ただ、少女にはタイムリミットがあることをひしひしと感じていて、出来ることならば少女でいるうちに死にた…

『シェイプ・オブ・ウォーター』を観た

観たいけどまだ観てない!って人もそろそろいないと思うので。 『シェイプ・オブ・ウォーター』を観ました。 この映画は、言葉を話せない女性イライザと同じく人間の言葉を話せない半魚人の恋物語です。半魚人の「彼」にイライザが人間の言語を教えていき、…

『シングルマン』を観た

人が死ぬ話が嫌いだ。死は永遠の隔絶であり、悲しくないはずがないのに、誰かの死で涙を誘おうとする小説や映画が嫌いだ。 『シングルマン』は恋人を失った同性愛者の主人公の最後の一日を描く。愛する人はこの世のどこにももういないのに、愛する人の不在と…

『チョコレート』を観た

ハルベリー主演の『チョコレート』を観た。原題は『Monster's Ball』(怪物たちの舞踏会)。英国では死刑執行前夜に看守たちが宴会を行い、それをMonster's Ballと呼ぶらしい。 邦題の『チョコレート』は日本の配給会社が付けたもの。キャッチコピーの「たかが…